【制作振り返り.2】小さなゲームから順序を踏んでいくという先人の教訓→それでもタスクは膨れ上がった話

今回は『かなちゃんは魔法少女』の製作を振り返るまとめ記事の第2回となります。
前回の記事はこちら!

【制作振り返り.1】『かなちゃんは魔法少女』製作期間2年10ヶ月の作業時間のまとめ

そして制作を振り返っているゲームはこちら!

『DLsite様:『かなちゃんは魔法少女~もしも変身シーンを見られたら~』
『FANZA様:かなちゃんは魔法少女~もしも変身シーンを見られたら~』

ゲーム制作のボリュームと時間の話

小さなゲームからコツコツ要素を増やしていった話

ゲームを作るのには、とても時間がかかります。
商品としてゲームを作ろうとすると短くても数ヶ月、長ければ5年10年ということもあり得ます。

開発期間が長くなると、途中で挫折して完成することなく消えていってしまうゲームもたくさん出てきます。
「完成するのは1割以下」(引用:インサイド様)という説もあります。
なので、まずは小さいゲームから作って、とにかく完成させるのが大事というアドバイスがよく聞かれるわけですね。

私はそれに従いました。
まず一つ目、1マップだけのゲームを6ヶ月かけて作りました。6ヶ月頑張ったのは1ヶ月だったと思います。魔法少女は出てこないのですが、路地裏でZキーを押してる間に人に見つからないようにするゲームでした。こちらはごく数人の知人にだけ公開したものです。
そうしたらなんかこのシステム行けるんじゃね? という気分になって『ちえちゃんは魔法少女』というフリーゲームを4ヶ月かけて作りました。
これが思いがけず大反響をいただきまして、公開したRPGアツマールさんで月間総合1位をとったりしました。

反響のあったシステムは完成している……『ちえちゃんは魔法少女』のシステムにちょっとだけ要素を足しつつR-18版にすれば、完成しないというリスクを抑えて商品としてのゲームが作れるのでは……!?

こうして一歩一歩階段を登るように、少しずつゲームのボリュームを大きくしていくことになりました。
本当はちえちゃんは魔法少女公開前の時点では、最初に作るのは普通のエロRPGの予定だったんですよね。

見積もり

『ちえちゃんは魔法少女』が4ヶ月かかったので、次のゲームは2倍のボリュームにして8ヶ月かな!

そうはいかなかった

34ヶ月かかりました。

なんでボリューム2倍で8倍の時間がかかるの!?!?

不思議ですね。私にも未だ原因の全てはわかりません
が、経験した以上ある程度は言語化することができます。
初めて1作完成させて次に少しボリュームを増やすぞ! という辺りの段階にいる方の参考になれば幸いです。

その2倍、本当に2倍ですか?

それではここから、最初の見積もりにあった2倍という数字が本当に正しかったのかを検証していきましょう。

ゲーム部分

まず、ゲームの遊び部分のボリューム。『ちえちゃんは魔法少女』で25ステージだったのを、だいたい2倍にしました。なので、イベントの数もステージ数と同じスケールで増えて前作と比べて2倍、ゲーム全体のボリュームも2倍になる! …………という計算でした。
50ステージ……に学校エリアを追加して60ステージにしました。
当初の予定ではさらにラストステージとしてエリア7に×××と対峙する1ステージを予定していましたが……御存知の通り、エリア7は3ステージに増えて合計63ステージになりました。さらに6-11の大ボスも増えました。少ステージですがif3ステージも増えました。65ステージになりました。

あとエクストラステージで2倍にの128ステージなりましたね。まぁ、こちらは『ちえちゃんは魔法少女』にもコインもりもりモードがあったので相殺!

じゃあこれでボリュームは2倍だな……と思いきや、実は増やしたステージは全部ボスステージ。ギミックがぜんぜん違うんです。『ちえちゃんは魔法少女』での操作は全て「変身中に見られないようにする」というもの。基本のシステムは同じでした。
ボスステージではシューティングになったり、ボンバ…………煙を撒きながら進んだり、レースになったり、イライラぼ……時間停止怪人を避けたり、ほぼ全部全く違うギミックを利用しました。7-2のナイフ投げとか公開されてるプラグインをハチャメチャに改造しましたからね。
楽しさを提供するためとはいえ、かなり豪快なことをしたなと振り返って思います。

ただし、こちらは変身エリアのステージとシステムは『ちえちゃんは魔法少女』のリメイクということでほぼそのまま使いまわして大きく手を入れる必要はなかったので、奇跡的に作業量自体は2倍といっても良いのかもしれません。
……本当に8ヶ月分の作業時間で終わったのか……? ギミック部分だけ抜き出した時間までは割り出せないので分からないですね……。

疑念はあるけど2倍! 2倍!

テキスト部分

『ちえちゃんは魔法少女』では5ステージごとに1シーンを割り当てていました。ステージ数が2倍になったので、シーン数も2倍……つまり、テキスト量も2倍! ということですね!

うーん惜しい!

『ちえちゃんは魔法少女』のイベント内に含まれる文字数は1万5千文字でした。
『かなちゃんは魔法少女』に含まれる文字数は…………18万文字でした!!!

10倍ですね!!!!

ちなみにエリア1、変身中に発見された3段階イベントの合計が1万6千文字なので、イベント1つで前作のテキスト量を超えちゃってますね。
これに関しては、『かなちゃんは魔法少女』の1シーンあたりの文字数が同人エロゲとしては比較的……相当に、多い方のようです。
開発中、同人エロゲ(RPG)では1シーンあたり20~30クリックで終わることを望む人が過半数を占めるというアンケートを見かけました。が、先程言ったエリア1の3段階イベントは1段階ごとに300クリック……合計900クリックのボリュームがあるのです。
これから作る人はそのあたりも鑑みてシーンの長さを決めると……苦労を抑えて需要に答えられるかも!
でもいちばん大事なのは作る自分自身の好み! 私は長い方が好みだったので長い方が好みの人に捧げました。

ところで結論ありきで記事より先に作った画像があるのですが、さっきの画像と合わせて話を進める必要があるのでとりあえずテキスト量は2倍ということにしておいてください。
……お前は2倍! お前は2倍!

CG部分

『ちえちゃんは魔法少女』では基本CG数は12枚でした。
『かなちゃんは魔法少女』では基本CG67枚。
5.5倍になってますね。

更にそこに、差分の違いがあります。
『ちえちゃんは魔法少女』では総差分枚数は41枚、ですが『かなちゃんは魔法少女』では……クリックで変化するタイミングだけを数えて461枚。お前も10倍か!!
しかもかなちゃんは魔法少女はエロゲなんです。表情が変わるだけでは許されない……。表情と一緒におまんこはすじ、広げる、先っちょ挿れ、挿入中、抽挿、溢れ精液とほぼほぼ全部描き直しになります。モザイクで隠れるのに!!
さらにはチンポも出てくる精液は飛び交う男は種付けプレスするし設定で即座に半透明にもなる!!

特に触手!!! 触手に精液を絡めるな卵と精液で触手を二回に分けるな二回に分けた触手の柄と太さを変えるな断面図差分で中まできっちり描くな!! とんでもない作業量だったよ!!

…………健全なゲームと求められる差分の量と性質が全然違ったので、とにかく表現方法を勉強しながらの作業でした。
こういうのはpixiv等で差分いっぱいの触手絵とか描いてたら事前に見積もりができたのかもしれませんね。
ですが残念ながら私はガッツリと差分いっぱいのえっちな絵を描いたことがなかったので大変な目に会いました。

多分個人でえっちなゲームを作り始める人の多くは、イラストが描けるからツクールもやってみる、という人の割合が大半だと思うので(逆なら普通はCGを外注する)、多分ゲームを作る前に差分30枚くらいの汁だく触手絵を描いたら作業量を見積もる目安になるんじゃないでしょうか。
……いや、そもそも差分3枚ぐらい(事前、挿入、中出し)のゲームから作り始めるのが正解であるということに気づきました。
差分大量の同人エロゲに慣れて感覚が麻痺してましたね。

そしてこちらは今までの話とは全然関係がなくなってしまった作業量2倍の図です。

2倍という前提ありきで先に図を書いてたから全然噛み合わないよ!

掛け合わせる

さて、ここまでシステム、テキスト、CGがそれぞれ2倍になった話をしてきました。
……2倍なんだ! 2倍なんだよ! 2倍ってことにしないとこの章が成り立たないだよ!

一つ一つは2倍でも、テキストが増えればCGも増え、ステージが増えればテキストも増え……と複雑に絡み合って、2倍×2倍×2倍の2の3乗で8倍! 4×8の32ヶ月ちょっと足して34ヶ月で完成! という事を言いたかったんです!

ですが!!

記事を書いて気付いた事実

テキスト!! こうだよね!!!

CG!! こうだよね!!!

んで!! 全部合わせたらこうだよね!!!!!!

結論

・ちゃんと反省しないとわからない事実が出てくる。

・ゲーム全体で2倍! みたいにざっくりするとこんな風に細かい部分の作業量がかっ飛んでいくので、一つ一つの要素の作業量をちゃんと管理しよう。2倍ではなく1.2倍ぐらいのボリュームにすると安全かもしれませんね。

健全ゲーム→成人向けゲームにするときはゲーム全体のボリュームは据え置きにしても良いと思う! エロに必要な作業量とんでもないから!!

でも、1.2倍のボリュームに抑えてもう少し早く完成させて、今の反響が得られたというと……おそらくそうではないんですよね……。競争がどんどん激しくなる同人エロゲ界に初手で大きく楔を打ち込めたという意味で、今回の場合は2倍にして成功だったとは……反省した後でも思ってます……!
反省で見つけるのは「こうしたら完成しやすかったよね」というあくまでも一つの指標にすぎません。
完成させられたなら、なんだって正義…………!!

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